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音楽レビュー等

yuckのマックスブルーム新譜を語る。

ヤックはロンドンを拠点に活動する結成7年目の若いバンドである。2011年にリリースしたセルフタイトルのデビューアルバムは批評家たちの大きな賞賛を得た。その音像はダイナソーJrや90年代のウィーザ―のようなリフ、フック、ボーカルであった。

 

デビューアルバムをリリースしたあと、バンドは大きな転換期を迎える。

2013年バンド結成時のメンバーであった、ダニエル・ブルームバーグの脱退。そしてプロデューサー兼ギターリストのエドワード・ヘインズの加入、さらには2ndアルバム「Glow & Behold」をリリースした。

 

そして2016年2月に3rdアルバム「Stranger Things」をリリースする。

このアルバムは激しく、ロックンロールの型にはまらない音楽が収録されており、yuckが1st,2ndよりもより輝いて見えるそんなアルバムである。

 

バンドとして絶頂期を迎えているyuckのフロントマン、マックス・ブルームのインタビューを掲載する。

 

yuckはデビューしてから5年経過したけど、今回のアルバムを出すにあたって結成当時と何か変わったことはあるかな?

 

マックス:このアルバムを作るにあたってバンドのメンバー全員が自分のキャリアの中で学んできたことすべてをつぎ込んだんだ。

僕たちは自分たちが出したい音をどうやって出すかを自分のキャリアを通じて学んでいる、そのことが絶対に役に立っていると確信しているよ。

それとメンバーとはここ数年はツアーで一緒にいることが多かったから、ライブで自分たちが演奏して楽しい曲を作ろうとも話していたんだ。

 

少しでもいいからこの「Stranger Things」を作るにあたっての準備段階について話してほしい、どうして「pledge music」からリリースすることになったのかな。

 

マックス:レコーディングが1年以上続いていたんだ。ちょうど、Hold Me CloserとCannon Ballを作っていたときかな、いろいろなことが起こって、ちょうどうまい具合にはまったんだよね。こんなに長いレコーディングをしたことがなかったから、僕たちは取り終えた後にどうやってリリースしようか考えたんだ。そしたらマネージャーがpledge musicの話をしてきてさ、それはおもしろそうだと僕たちも賛同したんだ。

 

自主制作でアルバムを出したり、小さなインディレーベルからリリースするのってマックスの過去の経験と比較してどうだった?

 

マックス:お金がかからないっていうのはいいよね、それに報酬も大手レーベルから出すよりも多い。ただ人それぞれだと思うから答えは違うと思うよ。

 

このアルバムに対する情熱はどこから来たのかな。

 

マックス:アルバムにはたくさんの人たちがかかわっている、それを過去2年間個人的には考えてきたんだけど、それを考えているときはあまりいい時間ではなかったな...そういったことを曲にしてきたつもりだよ。

 

バンドのメンバーが変わることを受け入れるのはとても難しいことだと思うんだけど、yuckの場合、フロントマンが抜けても立ち直ったよね。このことからどんなことを考えた?

 

多分なんだけど、なにをすべきでなにをすべきでないかを他の人たちがどう思うかも加味して考えるべきなんだと思う......言うのは簡単だけどやるのはとても難しいけどね。

簡単なことではなかったよ。でも友達が励ましてくれたりしたからそういったことも重要だったね。

 

話が変わるけど少ないチームでSXSWに出るのは以前と比較してどうだい?

 

今、バンドとしては日々によくなってると思ってる。だからどこでだろうとサウンドチェックなしだろうとプレイすることはできるよ。SXSWではみんなの期待している以上のプレイをしたいね。

 

アルバムをリリースしてのSXSWでの演奏はとても重要なことだと思うけどそれに関してはどう?

 

とてもワクワクしているし、オーディエンスのみんなも同じ気持ちだと思うよ。

 

今回、はじめてSXSWに参加するインディーのバンドもいるけど、彼らにアドバイスはある?

 

一生懸命演奏して、一生懸命仕事しよう。

 

SXSW以降の予定はどうなってるの?

 

アメリカで長いツアーを行うよ、ラスベガスとか行ったことない都市に行くことになってるよ。



yuckはボーカルがいなくなるという非常に珍しい経験をしたバンドでした。

その年にすぐにアルバムを出し復活をアピール、すばらしい。


3rdはもちろんとてもいい出来です。

過去作よりももっとシューゲイザー感が増しています。ソニックユース飛び越えてマイブラッディバレンタインぐらい。それは言い過ぎかもしれませんが、とても良い出来です。

honne【WARM ON A COLD NIGHT】

 

 

honneのデビューアルバム【WARM ON A COLD NIGHT】のレビューが海外サイトにあがっていたので翻訳してみる。

 

ロンドンを拠点にして活躍するエレクトロデュオhonneのデビュー・アルバムがリリースされた。タイトルは【WARM ON A COLD NIGHT】

このタイトルはこのアルバムにとってもあっている。その理由は2つある。

ひとつめは、「warm on a cold night」は彼らの最初のヒット曲であり、このアルバムのリード曲でもある。その曲名をタイトルにするとはこのアルバムに対する期待がとても高まる。ふたつめの理由はこのタイトルがhonneの奏でる音楽の要素を言い表しているからである。このアルバムはとても暖かく、またできることならば夜にベッドで、またできることならばこのアルバムから暖かさをもらうのではなく、他の人(自分の好きなひと)と聞いて欲しいアルバムである。

 

それではhonneの音楽の中に入ろう、準備はいいかな。honneの音楽に複雑なことはなくとてもシンプルだ。なめらかなシンセサイザーの音とアンディー・クラッターバックのソウルフルな歌声が混ざり合っている。彼らはこのアルバムの最初ではとても面白くキャッチーな方法で楽曲を作っていたが、アルバムの途中からなんだか陳腐な楽曲が増えているような気がした、そこで私は彼らのどこが限界でそれをどうやって超えなければいけないかを今回明かそうと思う。

 

まず最初にタイトル曲である「warm ona cold night」からこのアルバムはスタートする。

この楽曲からスタートすることはとても素晴らしいなぜならば、このアルバムの中でもっとも力強いトラックであり、なおかつ、このアルバムに対するリスナーの期待を高められる楽曲だからだ。

残りの楽曲から考えてこの曲は一番力強くもなければ一番気楽な音楽でもない、だからこそ、前菜としてリスナーはこの曲を聞くことができるのだ。

2曲目の「til the evening」これも1曲目と同じような構成となっている。密度の薄いコーラスからミュージカルのクレッセンドのように強くなっていくシンセサイザーが象徴的。

みなさんはキャッキーな1曲目をもっと聞きたくなるだろうが、私はこの「til the evening」はもっとソウルな楽曲から影響を受けており、コーラスがずっと鳴っているあたりが1曲目との違いであると考えている。

 

これまでの2曲はこのアルバム最大の名曲である、3曲目の準備でしかなかったのだ。

その名も「someone that loves you」である。

この曲の特徴は始まってすぐに、アルバム内でもっとも力強い音を出すところである、そして浮遊性があり素早いトラックは他のアーティストのエナジーみなぎる楽曲よりも素晴らしい。

そしてさらにアルバム唯一のフューチャリングでの楽曲であることも注目すべき点である。

イジービズ、彼女の特異な声が絶妙なさじ加減でこの楽曲を唯一無二のものにしてくれている。

そして、彼女の歌声の影響を最も受けているのがアンディだ。

彼はこの曲の最中、イジービズの歌声をかなり真似て歌っている、その結果この2人のヴォーカリストの歌声は素晴らしいものになっている。

 

アルバムを先に聞き進めよう、「All in the value」ではコーラスが楽しめ、さらに長くゆっくりなシンセサイザーの音ではなく元気で快活な音が聞ける。

次の「treat your right」ではポジティブな歌詞とともに、ファジーであたたかみのある曲調はまるで大きなくまに抱かれているような安心感を感じさせてくれる。

 

とても残念なことにこのあとの楽曲は聴き進むにつれて、ひどくなっていく。

「out of my control」は独創性にかけたスロージャムでwarm on a cold nightの二番煎じにもなっていない、さらに彼の犬の骨をあげたなどという歌詞も聞いた瞬間に身がすくむ思いがした。

多かれ少なかれ、アルバムの最初の方に入っている楽曲の焼きましのような楽曲しか今後は出てこない。

「it ain't wrong loving you」はゴスペル・ソウルに少し影響を受け、曲調をそれに合わせているがまったく感動することがなかった。

そして私はストレスを感じずにはいられなかった、なぜなら彼らはアルバムの最初の数曲で、大きな感動を与えてくれたのだ、にも関わらずなぜアルバムを通してその水準の楽曲を聞くことができないのだろうか。

 

しかし、終盤の2曲で私の評価は一変する。

「take you high」ファンキーな楽曲にさらにちょうどいいゴスペルのトーンが響きあうとても良い楽曲だ。

さらに「baby you're bad」最初に聞いた時、この曲はディスコビートだ!と私は感じた、私はディスコ調の音楽をこよなく愛しているので、勝手なバイアスがかかっていることは認めよう、しかしそれにしても終盤の2曲でこのアルバムの評価は見事にもちなおしたのだった。

 

このアルバムは非常に洗礼されたデビューアルバムであり、ところどころ魅力的なトラックもあった。

彼れは力はとてもあると思うので大きな羽をさらに広げてまだ踏み込んでいない領域までテリトリーを広げて欲しいと思う。

 

 

WARM ON A COLD NIGHT

WARM ON A COLD NIGHT

 

 

レペゼンを強くそして上手く主張する〜ozrosaurus ROLLIN'045〜

昨年のNWAを題材にした映画「straight out compton」これを見て私のヒップホップに対する価値観が変わった。

今まではB-Boyが好き好んで聞いている怖い曲、ギャングスタラップが幅をきかしyo yo言うだけの音楽だと思っていた、しかし、スクリーンに映る彼らは違っていた、自分たちの権利を、自分たちの存在を、自分たちを守るために、ビートに乗せ自分の思いを吐き出していたのだ、薬の売人で力を持っていたイージー・Eが恥ずかしそうに最初にスタジオに入ったシーンを今でも忘れない。

ヒップホップのバックボーンに触れた私はもっと聞いてみたい、もっと知りたいと思うようになったのだ。

そして、ヒップホップ初心者がヒップホップのアルバムを聞いてレビューをしようじゃないかと。

一発目はOZROSAURUS「ROLLIN'045」

横浜を拠点とするヒップホップグループですね、タイトルの045は横浜の市外局番です。

彼らの楽曲にはところどころに横浜を匂わす文言が登場し、実際に横浜のことを素晴らしいビートに乗せて歌っている楽曲も収録されています。

最近では山嵐やTOTALFATのメンバーが加入し、ミクスチャーバンドとして活動しているようです。

 

このアルバムはおおまかに言うと3部構成のような作りになっていると思っていて、それぞれの区切りのような形でskitを入れているのかなと。

1曲目「INTRO」から7曲目「VILI VILI」まではOZROSAURUSがもっともやりたいタイプの楽曲たち1曲目「INTRO」はこれから何が起こるか分からない不安感とワクワクする期待感を煽り、3曲目「WHOOO」のバックで鳴ってるファンファーレ的な音がとてもいい、ヒップホップの楽曲ってどんだけだみ声でMCが歌ってても後ろでループしてる音に威厳があるとトラック全体がシャキッとする印象があるんですよね。

「KOCO KOCO」は現場主義を歌った曲、そしてもっとも知名度があるらしい曲「AREA AREA」意外にもメロウなトラックだと思うんですよね、さらにリリックがとても聞いていてきもちいい「東京からやや西、潮の吹く港から」とこんな文言で横浜を言い表すなんて素敵すぎませんか。

 

そしてskitを挟み2部へと突入していきます。

2部のテーマは社会問題、ここではちょっと過激だけど直視しなければならない、社会問題を風刺しした楽曲が並んでいるのです。

9曲目の「RULE」政治に対する不満から、世界的な問題、大気汚染、チェルノブイリ、はたまたアメリカ合衆国までを名指しで批判します。これこそがヒップホップの醍醐味だと思うんですがいかがでしょうか、そういえば、ヒップホップの内省化が進んでいるという話を聞いたことがあります。アメリカのカニエ・ウエストからはじまり、現在のヒップホップは外に向いていずに中に向いていると、話がそれました。

そして10曲目の「少女A」とても過激なリリックが並んでいます、このアルバムがリリースされたのが2001年、この頃から現代と同じような問題が頻発していたのでしょうか。スチャダラパーを聞いた時も思いましたが、90年代の楽曲でもほとんど歌われている問題は変わらないっていうのは、とても恐ろしいことですよね。

 

またskitを挟み、3部に突入です。ここではBPM抑えめで素敵なトラックが並んでいます。

中でも「ROLLIN'045」は横浜を代表する楽曲といっても良いのではないでしょうか、ここまで横浜の各地を賞賛し、行きたいと思わせる曲も無いと思います。

夜明けという設定で、波音や鳥の声が後ろで鳴り響くトラックは本当に素晴らしい。

 

このアルバムを聞いて、レペゼンの価値観が変わりました。

今までレペゼン、レペゼン言い過ぎじゃないかと思っていた感があって、とりあえずレペゼン言えば良いと思ってる人ばかりなのかなと思っていましたが、045と市外局番を使ってレペゼンを言い表すのがとてもシャレていてこういう言い方はとてもかっこいいと。

レペゼンを主張するヒップホップも良いものだなと思いました。

 

 

ROLLIN’045

ROLLIN’045

 

 

アンニュイな音楽、今Sound cloudでメイン張ってるアンビエントな曲達

サブスクリプションの音楽サービスが徐々に人々の生活に浸透している昨今。

近々Spotifyも日本で利用できるようになるみたいな噂もあったけど、めっきり聞かなくなってしまた。どうなったんだろう。

www.itmedia.co.jp

音楽が水のように享受できるこの時代、その先駆け的な存在となったのはメインストリームではyoutube、アンダーグランドではSound Cloudではないかと考えております。

Sound Cloudでは普通の検索方法とは別にStreamという方法を利用してジャンルで楽曲を検索することができます。

このStreamgがどんな法則にのっとって選別されているかはわからないのだけれど。

備忘録的に気に入った曲を載せてきます。

おそらく30曲前後の楽曲が表示されて日々変化していっているはずです。

soundcloud.com

チェインスモーカーズというデュオ。

恥ずかしいことに今年のサマソニに出演予定、2014年には「セルフィー」という楽曲でブレイクしていたみたいです。

全く知らなかった。

この曲はデイヤっていう17歳のシンガーソングライターとのコラボ曲。

アンビエントというジャンルでタグ付けはされているものの、曲の入りなんかは完全にUSインディを彷彿とさせる感じ。

soundcloud.com

こちらはThe Rookiesとなっていますが、マイク・ポズナーさんの「I Took A Pill In Ibiza

実はこの人今までヒット曲はないもののマルーン5のシュガーやジャスティン・ビーバーのボーイフレンドを書いた人。

この曲がノルウェーのDJのリミックスに収録されスカンジナビアで大きな反響を呼び、2016年4月にはイギリスでチャート1位、アメリカで6位に入るという大躍進を遂げる。

今の時代を象徴しているようなカムバックの仕方。

北欧でのブームが英米へ影響を与えるなんて30年ぐらい前だったら考えられないことでしょう。

今の時代を象徴している1曲と考えても良いのかもしれない。

soundcloud.com

すごい耳触りのいい曲こういうのを待っていたんだ。

この楽曲は有志たちの集まりである「soda island」というプロジェクトの一環で作られた楽曲らしい、

ちなみにこの曲のリンクが貼ってあったとあるページではこのように紹介されていた。

「チャオ、今日はみんなにsoda islandについて知ってもらいたいと思ってる。Grynpyret、Ramzoid、Spire、Izzard、RefraQ、Xander Lewis、Avionics、 and Arian Cookなど多彩なプロデューサーが属する集団だ。彼らが作る音楽はとてもユニークで少しだけ未来の匂いがする作品が多い。アートワークも幻想的で少し漫画チックな要素も入っている。ソーダアイランドはすこしばかりミステリアスな感じもするけど、彼らがつくる楽曲は全部が良い曲だ」

なんとなく概要はつかめたかな。

ちなみに日本のメディアでは「1llumination」というところが取り上げていて

ゲーム&アニメ&ネット的透明世代が作り上げる独特のフューチャミュージックが集結するSoda Island/ソーダ・アイランド

というような呼び名がつけられてました。

みんな聞いたことあるって記載があるし、クラブシーンでは有名なのか。

◤【インターネット・オアシス】Soda Island ソーダアイランド/みんなあつまれ!フューチャ倶楽部【透明世代 要確認!】◢ | △ 1LLUMINATION △

 

soda islandのモチーフ絵は下記。

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ほのぼの感が満載。ちなみにフェイスブックの書き込みを見る限り、アルバムの発売が少し遅れているようで1月ぐらいにはアルバム出すよって言ったけど色々問題が生じててあと信号を一つ超えれば出せるよって言ってる。

ちなみにタイトルは「A Trip To Soda Island」クールだね。

 

soundcloud.com

これが一番キャッチーな曲。

kidswaseteはパリで活動をしているトラックメーカー。

freeというタイトルの示す通り、逃げることができる、逃げることができると歌う曲。

kidswasteはアートワークがキュートであるということでも知られていて、ピカチュウの声をサンプリングした楽曲も発表している。

 

だいぶごちゃっとしてしまった記事だったけど、定期的にあげていければ良いかなと思ってます。

ここであげてった楽曲をフィジカルでも所持したいんだけどすごいハードル高そう。

以上。

 

エレクトロの鬼才ダン・ディーコンが魅せた、Gliss Riffer

ボルチモアを中心に活動しているエレクトロアーティト、ダン・ディーコンを知っているか。

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長野で開催された、TAICOCLUBのも出演していた。

ちなみにTAICOCLUBは2018年で最後を迎えるらしい。

www.musicman-net.com

そんなことはさておき、ダン・ディーコンの最新作の話である。

今作の中で衝撃だったことはあのダン・ディーコンが歌ものを出した点である。

エレクトロの鬼才という異名を持つ彼なので、今までリリースしてきたもののほとんどが音メイン、レイヤーで例えるのであれば音楽が1番最前にあり、2番めに歌声のような構成が多かったのである。

soundcloud.com

soundcloud.com

しかし、今作は全く違う。

ダン・ディーコンの楽曲に載せて歌っているのである。

しかも、1曲目の「Feel the Lightning」は女性の声で歌っているにも関わらず、ダン・ディーコン自身が歌っているという実験的なことをしている。


Dan Deacon - Feel The Lightning (Official Video)

全体的に牧歌的な雰囲気が広がっており、前作「America」は攻撃的で音圧が高い楽曲が多かったが、今作ではガラッと変わっている。

さらに今作のタイトル「gliss riffer」聞き慣れない単語であるが、これはダン・ディーコン自身の造語であり、海外メディアにその由来を語っているので翻訳を載せる。

インタビュアー:まず最初にgliss rifferというタイトルの意味について聞きたいんだけど

ダン:glissっていうのはグリッサンドという音楽奏法の名称の短縮形で一音一音を区切ることなく滑らせるように演奏するって意味なんだ。例えばキーボードの上に指を置いてそのまま引きずるように鍵盤の上を滑らしたり、ギターのネックの方までスライドさせるような感じさ。rifferっていうのはギターのリフのことを言い換えているんだけど、インターネットでGrass RafterとかGloss Dripperとかいう単語を見つけたんだけどこれだと思って今回のアルバムのタイトルにしようと思ったんだ。うーんなんというか色々なジャンルを超えたものっていうか、あなただって僕が喋った言葉を書くわけでしょ、こういうのって当たり前に行われていることだけど誰も気付いて無いわけだよ、当たり前だって思ってて。

また他のインタビューではグリッサンドのようなリフが続いている音楽が多いということからつけたとも語っている。

楽曲の話に戻そう。

今作の変化として歌ものが増えたことは上述したが、それに加えもう一点変化したところがある。

それはミニマムな楽曲が収録されている点である。

ダン・ディーコンの音楽はリンク先を参照してもらえばわかると思うが、音数が多く変調が多いことが特徴であった。

しかし、今作のラスト2曲では単調なさらに使われている音数が少ない楽曲が収録されている。

ダンはこの2曲に関して、過去2作では密度が濃く、空間をいっぱいに使った音楽を展開してきたが今作の印象として密集していないことを印象付けたかったと語っている。

ここまでアンビエント(例えが間違っていることは承知の上)な音楽を作れるとはダン・ディーコンの才能には脱帽である。

ダン・ディーコンの新たな側面が見れる今作、前作とも合わせおすすめである。

 

Gliss Riffer

Gliss Riffer

 

 

 

America

America

 

 

 

オワリカラ【ついに秘密はあばかれた】迎合しすぎて見失ってしまったアルバムあるいは恐れ。

インディで活動したほうが良いのか、メジャーに活躍の場を移した方が良いのか、音楽を奏でCDを出す者にとっては永遠に解決することのできない悩みといえる。

 

CDが売れない売れないと言われている昨今において、メジャーに所属する意味はなんなのだろうか。

組織に属すことによってある程度の保証がされるからであろうか。社会的に身分が保証されるからであろうか。

商業的なムードに嫌気がさし、独立しレーベルを作るアーティストが増えてきている現代において、新たに活躍の場をメジャーへ移したバンドがいる。

それがオワリカラである。

2008年にデビューしたタカハシヒョウリ率いる4ピースバンドのオワリカラ

5月16日にリリースした【ついに秘密はあばかれた】でメジャーデビューする。

前作【サイハテ・ソングス】ではオワリカラの未来形である音像を見つけたと語っていたタカハシヒョウリ

タカハシ「今回、音楽的にはそこがすごく肝だと思ってて。『MUSIC SLIDER』『はなとゆめ』みたいな曲が、意外と予告編というか、未来を語ってるんじゃないかなって気はする。自分らなりのソウルというか、ちょっとそういう部分を追求したい気持ちもありまして。それが出来た最初の一歩かなっていう感じがするんですけどね」 

 前作ではオワリカラが持つ神秘主義的な部分が前編に漂っており、オワリカラがアルバムを出していると100%分かるアルバムになっていた。

さらに前作最後の"L"では「現実のギリギリちょっとうえ、おれらのねぐらを作るんだ」と歌っておりオワリカラとしてやっていく決意表明のようにも感じられた。

 

その前作から2年、今作【ついに秘密はあばかれた】である。

あまりにも迎合しすぎなアルバムではないかと疑問を投げかけたい。

前半6曲は2016年に、後半6曲は2015年に作成をしたものとタカハシヒョウリ自身が語っている通り前半と後半で雰囲気が違う楽曲たちが収められている。

前半6曲に関してはオワリカラのらしさが感じられず残念な出来になってしまっている。

それはなぜなのか、おそらく楽曲の構成がかっちりしてしまっているからだと考える。

メジャーデビューするにあたり、わかりやすい曲調を意識しすぎて曲を作ってしまったのではないか、そこがオワリカラらしさを消してしまっている。

歌詞にも「おじいちゃん」「おばあちゃん」という単語が2曲にわたり使われており、これは全世代に音を届けたいという意思表示に思える。

その意志がオワリカラらしさを半減させてしまっているように感じられる。

後半6曲に目を向けてみると、対象的になっており、今までのオワリカラらしさを盛り込んだ楽曲に対して管楽器が入っている曲、前作で未来形と称したようなリズムを持った曲などオワリカラが正当にレベルアップしているところが見て取れる。

そして"new music from big pink"においては「おれの想い 夜を越えて お前の街へ」「おれは今ここにいるよ 燃えているよ」とオワリカラの今作にかける想いが乗っかっている。

 

インディ時代の方が良かったなんて使い古された言葉は使わない、メジャーに行ってもオワリカラらしい音楽を鳴らして、そしてそれを世間に知らしめて欲しい。

インディを捨ててメジャーに移った彼ら、多少の戸惑いはあるにしろ間口は既に開かれた。メジャーの舞台で存在証明をしてもらいたい。

 


オワリカラ『new music from big pink』MV

 

 

ついに秘密はあばかれた(初回限定盤)(DVD付)

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ついに秘密はあばかれた(通常盤)

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今こそ聞くべきだ、digitalismを

デジタリズムが5年ぶりに新譜を出した「Mirage」というアルバムである。

ジェイムズ・ブレイク、レディオヘッドと相次ぐビッグアーティストの新作リリースのタイミングでなぜデジタリズムなのか。

理由は簡単、デジタリズムが好きだからである。

このドイツ出身のデュオに心酔しているのである。

そしてどこのメディアもこのアルバムに触れていない、おかしい、日本はおかしい。

知らない方はいないと思うが一応経歴を。

2007年ヒットシングル「pogo」を収録した「idealizm」(邦題:デジタル主義)をリリース。これが大ヒット、「pogo」は世界中のDJに愛され、2007年のクラブシーンで一番かけられた曲となる。この時点ではまだデジタリズムをわたしは知りません。心酔しているとか言っといて2ndからの付き合いです。

 


Digitalism - Pogo [Official Video]

その後4年間の潜伏期間を経て出された2ndアルバム「I LOVE YOU DUDE」ここからリアルタイムでデジタリズムと付き合っていくことになっていく。

「2 Hearts」と「Blitz」が収録された今作をどれほど聞いたか。

ちなみに2ndを出した時のiLoudにて(この時はまだiLoudが紙で出てました......)「今作はとてもフレンドリーに作ったよ、前作が宇宙にいたとしたら地上に戻ってきたみたいな、人間味溢れる作品になっている」と語っていますが、その通りで確実に「idealizm」よりは人間味あふれる作品になっています。


Digitalism - 2 Hearts (Official Video)

そしてまた5年ぶりに出した新作が「Mirage」なのである。

ジャンルとしてはエレクトロ。エレクトロのアーティストが出すアルバムに関して正直興味を持てなかった自分としては、そこまで期待をしていなかった今作。

なぜならばエレクトロのアーティストで盤ごとに進化してたのってケミカル・ブラザーズとかプロディジーとかレベルまでいかないとないじゃないですか。

そしてデジタリズムに関してもそのレベルに達しているとは思えなかった。

デジタリズムとしては前作「I LOVE YOU DUDE」で完結していたと思っていたので食指がどうも動かなかった。

しかし、聞いてみて愕然。

彼らは前述のケミカル、プロディジーの域に達したと言っても過言ではない。

オープニング「Arena」がまさかのインストである。基本的にデジタリズムは歌ものが多い印象があったためにこの入りはとても驚いた。ここから徐々に今作に対する期待感が上がっていく。

「Go Time」では珍しく攻撃的な(単純にBPMが高い曲だけどこういった方がかっこいいかなと)音楽でさらに従来との違いを明確にしていく。

そしてもっとも従来の作品との差を感じた曲が「Mirage Pt.1」「Mirage Pt.2」と連なる2部作である。

「Mirage Pt.1」では開始当初は平穏な音たちが徐々にうなりを上げてクライマックスでは高揚感ある曲に進化をする。今までのデジタリズムにはこんな構成はあり得なかった。

「Mirage Pt.2」では昨今流行りのEDMのような音を取り入れており、屋外のライブでも魅力的に響く、ジャケットにあるような鏡で乱反射をさせるような楽曲に仕上がっている。

今までデジタリズムは、クラブの中での音楽を目指してきたように感じていたが、上記2つの楽曲でいよいよクラブを飛び出して一気にスタジアムレベルのアーティストになろうとしているのかもしれない。

また「The Ism」では、シンプルなトラックにラップ調の歌を乗せており、EDM後の今の音楽シーンに対しても順応できる様を見せつけることも忘れていない。

非常に多様性の高いことを今回のアルバム「Mirage」で見せつけたデジタリズムが、今後の音楽シーンの重要なデュオになっていくことも十分に考えられる。

さらに今年のサマーソニック出演も決まっている。

 


Digitalism - Go Time (Official Video)

 

 

Mirage

Mirage