今こそ聞くべきだ、digitalismを
デジタリズムが5年ぶりに新譜を出した「Mirage」というアルバムである。
ジェイムズ・ブレイク、レディオヘッドと相次ぐビッグアーティストの新作リリースのタイミングでなぜデジタリズムなのか。
理由は簡単、デジタリズムが好きだからである。
このドイツ出身のデュオに心酔しているのである。
そしてどこのメディアもこのアルバムに触れていない、おかしい、日本はおかしい。
知らない方はいないと思うが一応経歴を。
2007年ヒットシングル「pogo」を収録した「idealizm」(邦題:デジタル主義)をリリース。これが大ヒット、「pogo」は世界中のDJに愛され、2007年のクラブシーンで一番かけられた曲となる。この時点ではまだデジタリズムをわたしは知りません。心酔しているとか言っといて2ndからの付き合いです。
Digitalism - Pogo [Official Video]
その後4年間の潜伏期間を経て出された2ndアルバム「I LOVE YOU DUDE」ここからリアルタイムでデジタリズムと付き合っていくことになっていく。
「2 Hearts」と「Blitz」が収録された今作をどれほど聞いたか。
ちなみに2ndを出した時のiLoudにて(この時はまだiLoudが紙で出てました......)「今作はとてもフレンドリーに作ったよ、前作が宇宙にいたとしたら地上に戻ってきたみたいな、人間味溢れる作品になっている」と語っていますが、その通りで確実に「idealizm」よりは人間味あふれる作品になっています。
Digitalism - 2 Hearts (Official Video)
そしてまた5年ぶりに出した新作が「Mirage」なのである。
ジャンルとしてはエレクトロ。エレクトロのアーティストが出すアルバムに関して正直興味を持てなかった自分としては、そこまで期待をしていなかった今作。
なぜならばエレクトロのアーティストで盤ごとに進化してたのってケミカル・ブラザーズとかプロディジーとかレベルまでいかないとないじゃないですか。
そしてデジタリズムに関してもそのレベルに達しているとは思えなかった。
デジタリズムとしては前作「I LOVE YOU DUDE」で完結していたと思っていたので食指がどうも動かなかった。
しかし、聞いてみて愕然。
彼らは前述のケミカル、プロディジーの域に達したと言っても過言ではない。
オープニング「Arena」がまさかのインストである。基本的にデジタリズムは歌ものが多い印象があったためにこの入りはとても驚いた。ここから徐々に今作に対する期待感が上がっていく。
「Go Time」では珍しく攻撃的な(単純にBPMが高い曲だけどこういった方がかっこいいかなと)音楽でさらに従来との違いを明確にしていく。
そしてもっとも従来の作品との差を感じた曲が「Mirage Pt.1」「Mirage Pt.2」と連なる2部作である。
「Mirage Pt.1」では開始当初は平穏な音たちが徐々にうなりを上げてクライマックスでは高揚感ある曲に進化をする。今までのデジタリズムにはこんな構成はあり得なかった。
「Mirage Pt.2」では昨今流行りのEDMのような音を取り入れており、屋外のライブでも魅力的に響く、ジャケットにあるような鏡で乱反射をさせるような楽曲に仕上がっている。
今までデジタリズムは、クラブの中での音楽を目指してきたように感じていたが、上記2つの楽曲でいよいよクラブを飛び出して一気にスタジアムレベルのアーティストになろうとしているのかもしれない。
また「The Ism」では、シンプルなトラックにラップ調の歌を乗せており、EDM後の今の音楽シーンに対しても順応できる様を見せつけることも忘れていない。
非常に多様性の高いことを今回のアルバム「Mirage」で見せつけたデジタリズムが、今後の音楽シーンの重要なデュオになっていくことも十分に考えられる。
さらに今年のサマーソニック出演も決まっている。
Digitalism - Go Time (Official Video)