Hip-HopのようでHip-Hopでない何か〜Mister Mellow〜
Washed Outが2013年Paracosm以来のフルアルバムをリリースした。
Washed Outといえば2011年に1st Within and Withoutをリリースし、チルウェイブの代表格として世に知れ渡ったアーティストである。
そして2枚目、Paracosmでは多幸感溢れる楽曲たちを収録し、Washed Out象を確固たるものとした。
しかし、今回のMister Mellowはどこか毛色が違う作品になる予感があった。
その一つの要因として、レーベルを移籍したことがあげられる。
そう、j dillaやMadlibらが所属する、またはしていた、Stones Throwからのリリースなのである。
彼自身インタビューでこのレーベルから出す特別さをあらわにしている。
「新たに作品を出すにあたり、レーベルを移籍したことはとても大きい、特にストーンスロウはここ10年から5年で1番成長してるレーベルだと思っているよ、ヒップホップを主に扱うレーベルだということはもちろん知っている、ただ彼らはジャンルを手広くやっていて、僕の想像を超えていたんだ、レーベルからの影響はとても大きいよ」
彼はこのあと今作がヒップホップ的な要素と制作方法をしていることについて言及し、僕はまだまだサンプリングについては学生レベルだよとも話している。
ここまでの経緯を見ていただくとこれまでの作品とはとても違うということが分かってもらえると思う。
楽曲たちに目を移しても、今までの打ち込みや俗に言うチルウェイブ的な楽曲ではなく、サンプリングを基本とした楽曲が多い。
そして、歌詞についても今作では本当にWashed Outなのかと耳を疑う物も多い。
「月曜、火曜、水曜、毎日同じような日々、おれは起きて、会社に行く、そして自分のベストを尽くす、そのためにもおれのテンションを下げるものを全て忘れる必要があるのさ」
「俺の人生はとても退屈なものだ、しかし音楽は大好きだ、もし聞いてる音楽が良いものだったとしたら、音楽はおれをハッピーにしてくれる」
「アメリカはストレスにさらされている、最近の調査で判明したそうだ、そして無料のメンタルヘルスケアを推進している」
などなど、とてもリアリティ溢れる歌詞が多くなっている。
これは今までのWashed Outとは明確に違う部分である。
これがこれからのWashed Outのモードだという決意表明とも取れる今作、ぜひとも聞き、このストレス社会を乗り切る糧にして欲しい。
Washed Out - Hard To Say Goodbye