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音楽レビュー等

fantasmaに見る自分の生き方と小山田圭吾とpunpee

過去は振り返らない、ラッパーがよく言いそうな言葉だが、自分は割りとナチュラルボーンにそういう生き方をしている気がする。
小中高とつまらない日々を過ごしていたからなのかなんなのかは分からないが、社会人になってからもこの癖は抜けていない。
 
音楽に関してもこの癖は抜けない。
古い音楽は退屈だと思い込んでいた、だからビートルズは聞かないし、昔の音楽なんてダサいと思っているし、新しい曲だけを追い求めてきた。
 
そういえば、「空飛ぶ広報室」(TBSドラマ)で主人公、空井大輔(綾野剛)の上司鷺坂(柴田恭兵)が「酒を飲むときは未来の話をする」と説いていたことを思い出す。
 
こんな生き方をしていたから、今、オザケンが復活したからといってフリッパーズギターは聞こうと思わなかったし、オザケンの新譜もスルーしていた。
表題のコーネリアこと小山田圭吾に関しても聞いたこともなかった。
そもそも渋谷系というカルチャー自体を嫌悪していた節さえある、過去のムーブメントなんてどうでもいいと。
 
しかし、仕事上コーネリアスを聞いておいた方が良い局面に出くわした。
だから聞いた新譜「Mellow Waves」を、全然ピンとこなかった、なぜこの楽曲がこんなにも受け入れられているのか分からなかった、全くわからない...
iPhoneからはただ「The Rain Song」が虚しく流れている。
そんな中で目を引いたのがコーネリアスが1997年に出した「fantasma」だった。ジャケがポップで何よりタバコを吸っている小山田圭吾と全体のオレンジがアンバランスで不穏な空気を感じたのだ。
早速再生ボタンを押す、M1「MIC CHECK」なんだこのサンプリングだらけのつぎはぎの曲は、実際のマイクチェックを利用しているのかは分からない、イッツアスモールワールドのテーマから口笛のベートーベン、そこから始まるドラム、一気に引き込まれてしまった、さらにM5までシームレスにつないでいく楽曲たち、繋がっているのに流れてくるのはジャンルの違う曲、1997年という年にこれほどまでの楽曲を作れるアーティストがいたのか、静と動をうまく使い分けるセンス、コーネリアスの影響を受けているアーティストはもっと頑張れと思ってしまうほどこのアルバムは素晴らしい。
 
さらに1997年といえばaphex twinの「Richard D James album」がリリースされた1年後、同年にはmouse on mars「autoditcker」がリリース、さらに1998年にはtortoiseTNT」と時代はポストロック、IDMという音楽をちぎって貼り付けて作る音楽の扉を開けようとしていた、そんな中、世界的にも類を見ないアルバムが日本で生まれていたなんて...自分が10代の時にこれを聞いていたら、今聞けたことにも感謝なのだが、もっといろいろなことをこのアルバムから感じ取れていたのかもしれない。
 
時は回って2017年、ヒップホップの最重要アーティスト、punpeeが奇しくも自身初のフルアルバムを出したこの年に、サンプリングてんこ盛りなアルバムに出会えたのは何かの因果かもしれない。punpeeの新譜は今回、映画を模した作りになっている、色々な方面から自分を見てキャラ作りして、客演もあの手この手でpunpee自身をいじっている。何か「fantasma」「modern times」はどこか似ている気がする。
 
小山田圭吾とpunpee、ジャンルは違えどこの2人には共通のものが何かあるような気がしてならない。