2018年ベストディスクたち
2018ベストディスク
順不同
2018年が過ぎ、2019年がはじまった。
テン年代最後の年。
テン年代終盤が激動の年であったことを現代を少なからず思案し生きている方ならば感じただろう。
全ての事象が単一のものでなくなっている、複雑に絡み合った魑魅魍魎の世界。
目を海外に向けてそういったことを論じるのはとても簡単だ。例えばmetooであったり、black lives matter、もしくはUKのEU離脱。
これらの事象が様々な要因が絡んでいることは容易に推測できる。
それでは我々の生活はどうだろう、自分の趣味、仕事、考え方しては。
日本人の社会は海外とは違う、終身雇用、義務教育...etc。
しかし、これからの時代自分のことを自分で判断し、考え、行動していなかければならない時代が確実にやってくるであろう。
音楽に関してもそう、全国民が熱中するアーティストは数えるほどになり、それぞれが自分の好きな音楽を見つけ、聞く。
ただ待ってほしい。現代に単一の事象などというものはもはや存在しないのだから、音楽だって様々なものが絡まりあってできているのではないのか。あの曲を聴くのだったら、この曲も聞いたほうが良い、なんならあの社会的事象に関して理解をしてから聞いたほうが良い。世界ではすでにそういった聞き方を推奨している、というよりもそういった聞き方をせざる負えない人たちが多い。
それは自分たちの社会に音楽が寄り添っているし、また、そういった曲でないともう聞かれることも少なくなってきているからだ。
音楽、いやすべての事象において世の中に存在しているものが単一では存在できない世界。面倒くさいと思うかもしれないが、そういった世の中を楽しんで生きていったほうが良いのではないかと思う。数珠つながりの世界を全てを把握するのは無理でも自分の言説、考えそういったことを自分の中の羅針盤として生きていくのはとても楽しいのではないか。
そんなことを考えた年末、少々風呂敷を広げすぎた感はあるが、もしよければ下記10枚をチェックしてみてほしい。
Kaille Morgue「MEDUSA」
緑髪が特徴的なミューズ。
日本ではまだそこまで知名度が高くないけれど、女性SSWブームに乗って絶対に来ると信じ続けていた2018年。
結局日本ではそこまで話題になることもなく、むしろビリーエリッシュとかそっちに話題が傾倒してしまった感が否めない。
フルアルバムはまだだし、EPしか出してないし、気まぐれで音楽を辞めてしまうかもしれないけれど、「Discovery」のスケールの大きさはとてもこの年代の子が書いたものとは思えないほどで絶対に聞いておいたほうが良い。
Rejjie Snow「Dear Annie」
ダブリン出身のラッパー。このアルバムを2月に聞いた瞬間から今年はアイリッシュのラッパーの時代が来ると信じていたけど来なかった2018年。夏ぐらいからUK出身のR&Bシンガーたちが北米のメインストリームへと取り込まれていったのでそこらへんで、この予言もいいところを突いていたと信じたい。
3,4曲の間に次の自分の曲をラジオDJのように説明するスキットが収録されているのがとても印象的。
こういった手法を取ってるアーティストってなかなかいない気がするんだけど。
今年の来日が決まったCrailoちゃんのアルバムにもFeatで参加していたりしてる。
ベストトラックはもちろん「Egyptain Lurv」ちなみに曲中に出てくる1971年という年号には何の意味も無いそうです。
Jorja Smith「Lost & Found」
ドレイクによって発見されたイギリス・ウォルソール出身の21歳の歌姫。
とても良いです。
「Blue Lights」が一番有名な曲かと思われますが、自分のオススメは「Teenage Fantasy」サマソニでも拝見しましたが、声が一つの楽器のような力強さを持っており、エラ・メイ同様にアメリカ中心だったR&Bの世界をイギリス側に引き寄せる力を持っているひとり。
日本ではあまりフューチャーされることの少ないドレイクですが、こういった在野のアーティストを見つける力は絶大で最近だとスケプタなんかもドレイクが見つけたひとり。
話が逸れましたが、ドレイクには今年も素晴らしい才能を発掘してほしい。
5lack「KESHIKI」
板橋出身のラッパー。兄のpunpee、友達のgapparとともに組んでいるPSGは日本ヒップホップ界に新風を巻き起こした。
5lackの3年ぶりのフルアルバム。待望のアルバム。
マジで待ってたよ、最高。どのメディアも取り上げないけど最高。
色々な人に言ってるけど、今回のアルバムはクラシックと呼ばれる作品になると確信している。
5lackって孤高の存在っていう印象がとても強くて、それをさらに補強するアルバムというか
Twilight Dive
「弱い奴は固まり、強い奴は孤立して、弱い奴が噂して、君のこと僻んでる」
みたいなこういったリリックが結構多い。あと、時間に関しての言及も多い。
九州に移動して数年、多分東京のしがらみだったりなんだったりが嫌になったんだろうけど、「my space」の頃から比べると大人になったなって、「進針」でも「hot cake」のリリックを若干セルフサンプリングしていたり、2019年もすでにAKANEとのコラボ曲を出しているし、2019年、5lackは結構動きを見せるんじゃないかな。
GEZAN「Silence Will Speak」
GEZAN、マヒトゥー・ザ・ピーポー率いる4人組のバンドの4枚目のフルアルバム。
正直、GEZANというとキワモノなイメージが強く、今回もそこまではまらないだろうなと思いながら聞いた。素晴らしかった。一瞬にして虜。タイトルが示す通り、このアルバムは普段何かを発信したとしても聞こえないような小さいものたちの声を体現したもの。自分自身の境遇ともあいまってとても共感してしまった。
日常に不満を持っている者、何かモヤっとしたものを抱えている者は絶対に聞いた方が良い。
というか今の日本でこれが売れずに何が売れるんだと言い切れる、かなり良いアルバム。
Sophie「Oil of every pearl's un-insides」
PC musicの中核メンバーsophieの1stフルアルバム
音はインダストリアルでノイズな一聴するととっつきにくい感じもするが、何回か聞いてるうちに病みつきになってしまうから不思議。
オススメは「faceshopping」だろうか。
「My face is the front of shop
My face is the real shop front
My shop is the face I front
I'm real when I shop my face」
といった叙述トリック的なSFちっくな近未来の消費主義社会を風刺しているような歌詞が、ノイズな音像とともに語られる。2045年からの贈り物といわれても疑わないぐらい、近未来。
NAS「NASIR」
NASの6年ぶりのフルアルバム。
さらにカニエ・ウエストのプロデュース群の一端として作られた今作。
「cops shot the kids」この楽曲はNASらしい現代にもまだはびこる黒人への差別を多角的に、表現した素晴らしい曲である。
バックで流れている「The cops shot the kids」というワンフレーズは、スリックリックの「Children's Story」からのワンフレーズループであるし、冒頭部分はリチャードプライヤーの作品からのサンプリングである、どちらの作品も70年代、80年代の作品であり、当時から現代に至るまで、黒人に対する差別的な仕打ちがまだ続いていることを示唆している。
2017年にスーパーなリリースがヒップホップ界に多かったため、2018年は少しトーンダウンした感もあるが、こういったレジェントたちが新たに作品を仕上げ、それがセルアウトではなく、しっかりと骨太に主張したいことをあの手この手を使って表現してくれることに喜びを感じたい。
AcidClank「Addiction」
大阪を拠点に活動する4人組バンドの1stアルバム。
とうとう日本のバンドもここまで来たかという印象。
おそらく現状のメインストリームではないということは承知で、ここまで数々のバンドの影響を垣間見えるバンドってあったかなと。
こっちはマイブラ、こっちはオアシスのように楽曲によって、中には同一楽曲の中に、バンドメンバーたちの聞いて来た音楽が色濃く反映されている。
UKロックに影響を大きく受けたらしいが、確実にブリットポップよりは、ライドとかジーザスアンドメリーチェインといったシューゲイザーだろうなという感じの楽曲はとても好み。このまま続けていって欲しい。と思ってインタビューを漁ったら、オアシスからマッドチェスターへそっからエイフェックスツインとかに流れていったようで、なるほど、そっちの影響ね、そんな感じねって感じ。
cero「Poly life multi soul」
西東京を拠点に活動する3人組、ライブやアルバムによってサポート編成は変化するバンドの4枚目のアルバム。
前回の「Obscure Ride」が頂点かと思っていた、違っていた、恐ろしいほどの変化があった、しかも良い方向に。
先行で公開されていた「魚の骨、鳥の羽根」を聞いた時、背筋が凍った。
もうロック一辺倒ではないぞ、ある程度の音楽を聴いているぞ、R&Bだって掘ってるし、フリーソウルなんかも聴いてる、ceroってそっち系でしょ、もうどんなもん来たって怖くない、なんて思っていた自分がいかに愚かだったか、それと同時に音楽ってこんなに幅あるの!?、もう嫌だ、ディグれないどんな音楽を聴いてきたらこんな曲作れんのっていうぐらいに得体の知れないものだった。
そこからのアルバム、正直理解が追いつかないものも多いし、かなり怖い存在。
ラストトラックの「Poly life multi soul」だけが唯一分かりやすいと思っているのだけど、煙に巻かれているような感覚になるアルバム。
仙人掌「Boy meets World」
Down Noth Canp、Monjuといったヒップホップクルーに所属しているラッパーの2枚目のフルアルバム。
こちらのアルバムもここまでハマるとは思わなかった。
全ての楽曲が良いのはもちろんなのだけど、4曲目の「Darlin feat JJJ」だったり、ラストトラックの「World full of sadness」この2曲がかなり良い。
仙人掌ってかなり政治的なラッパーだと認識しているんだけど、世間の認識ってズレてんのかな。
「雄弁に語るコメンテーター、一つ言えねーのはごめんって言葉」とかあと下記のど真ん中ラジオでの楽曲とかね。
めっきり減った気がする政治的なラッパー。アンダーグラウンドでは活動している人たちもいるのかもしれないけれどそこまで、掘れてない、ごめんなさい。
ただ、近年のラッパーは自分たちの半径5mをリリックにしている人たちが多い印象で、正直君繋ファイブエムって感じなんだけど、やっぱヒップホップって世の中に色々なことを伝えられる武器だと思っている節が自分の中では強くて、自分たちがどうこういうのもあれだけど、1人ぐらい、世の中を憂いて世の中をうたってほしいなと思う。
それが過去ではECDであったり、Boss the MCだったりしたんだけど、若い人たちの中では仙人掌がやっぱ筆頭かな。この路線で突っ走ってほしい。
以上で10枚。
かなり支離滅裂ボロボロぐちゃぐちゃな内容で大変申し訳ないです、精進します。
しかし、2019年は「言語化」これをしていきたい年ですね。
更新頻度も上げたいです。
あと、禁煙と減酒と貯金、以上です。
Jolja Smith「
「
仙人掌