日本におけるリアルヒップホップ〜BAD HOP BAD HOP DAY 1
ジャパニーズヒップホップはリアルを歌っているのか…
これは、日本のヒップホップを語る上で避けては通れない問題である。
MSCのリーダーであるMC漢は、実際に出来ないことは歌わないそれがリアルなラップだと以前語っていた。
また、SLACKやPUNPEEといった板橋出身のラッパーたちは、自分たちの日常を歌うことによって、新たにリアルさを見出してきた。
そんな中、日本における本当の意味でのリアルなラップを歌っているクルーがいる。
それが川崎出身のBAD HOPだ。
神奈川県川崎市、東京と横浜2つの有名な都市に挟まれている南北に細長い地形。
近年は武蔵小杉の発展が目新しいこの市だが、東京湾に面する川崎駅の南側には工業地帯が並んでおり、工場労働者はたまた、過去に海外から工業地帯に働きにきていた外国人たちが住んでいる。
工業地帯で生まれ育った、T-PABLOW、YZERR率いるクルー、BAD HOP
現在のフリースタイルブームの礎を築いた番組と言われる「高校生RAP選手権」ここで頭角を表したT-PABLOWは現在、「フリースタイルダンジョン」でモンスターという立場で日々フリースタイルを披露している。
なぜ、彼らのヒップホップがリアルといえるのか、それはその生い立ちや育ってきた環境がゲットーだからである。
私自身川崎で生まれ育ってきた、だからこそ南部の荒廃感は身を持って知っているし、できれば近づきたくない街という認識をしている。
あの場所で生まれ育ってきたやつらの言葉に嘘は無いし、実際に私なんかには想像できないほどに修羅場をくぐってきたのだろう。
だからこそ、彼らのリリックには魂がこもっていると考えている。
そして彼らが9月にフリーダウンロードという形で配信したのが「BAD HOP DAY 1」である。
正直言ってトラックに関して目新しい物は特にないと言っても良い、彼らはトラップ系のトラックを主に使っているが、どの曲も似通ってるなっていう印象が強い。
このアルバムの注目点は、トラックではないリリックである。
前述のとおり過酷な環境で育ってきた彼らの生き様がありありと描かれているリリックにこそ注目をすべきなのである。
だからこそ、酒飲んで明日の仕事はバックレるみたいな歌詞が多用されているのも事実なのだが…
T-PABLOWとYZERRの2人が歌う「Life Style」がこのアルバムのメイントラックである。
「お前らのhip hopは習い事、hip hopは生き方だから一緒にするな紛い物」
「hip hopてのは生き方って学んできた道端ぶっ飛ばされて教わってきたんだ 礼儀と口の利き方」
これこそがリアルなヒップホップではないだろうか。
ヒップホップの歴史を紐解けば、NWAに代表されるようにゲットーからの脱出、自身の不憫さを歌う、また自分たちの置かれた立場をなんとかしていきたいということが歌われてきた。
現在の日本において、ゲットーのような地区は数えるほどであり、誤解を恐れずに言うのであればその一つが川崎工業地区なのである。
そのゲットーからの這い上がる決意を歌った音源たちが無料で手に入る、これを聴かない手はないだろう。
一つ苦言を呈するのであれば、下記の「Life Style」のPVがあれだけ川崎レペゼンと言っておきながら横須賀と渋谷で撮られているということである。
なぜ川崎で撮らなかったのか、クルーの意向なのかはたまた、ディレクターの意向なのかは知るよしも無いが、そこだけが残念であった。
BAD HOP /ライフスタイル - T - Pablow 、 YZERR (ゴールドDIGGAことで製品版)