ジャンルも全ても飛び越えるバンド...のようなもの
情報化社会はあらゆる効能を生み出している。
例えば一節によるとインターネットが普及する前と現在で人々が目にする情報量は410倍にもなっているとされ、そうすると人間は情報の荒波に飲まれ頭は洪水状態、もう情報はいらないよとなっているらしい。
そこで大事になってくるのが情報の取捨選択。
何気なくぷらぷらTwitterを見ていたことが良かったようだ、2017年の最重要アルバム、skillkillsの新譜発売情報を逃さずに済んだからだ。
skillkills、バンド名からして不穏な匂いのするバンド。
ヒップホップのレーベルとして名高い「black smoker record」から音源を出した初のバンドとしても知られている。
やばい遺伝子との愛称がつけられるほど、とにかく音がリズムがめちゃくちゃだ。
もちろんバンドだからこの複雑な音を演奏しているんだけど、それがとても良い。
最初は打ち込みかなと思ったんだけどどうやら違うらしい。
この謎のリズム感、そしてそれに乗るスグルスキルのラップというよりはむしろポエトリーディングのような、心地良いしゃがれ声。最高すぎる。
この変態的、超変異種の3ピースにさらに今回、邦楽ロック界の奇人こと、向井秀徳が参加しているのである。
正直、バックで流れてる音も最高、マイルスみたいに屁をこく向井も最高なのである。
(そういう歌詞が曲中にあり、その後向井はブッヒーンと屁をこくのである)
ただ、どちらも変態的響きなので情報の洪水になること間違いなし、インターネット前から増えた410倍なんて比じゃないぐらいの洪水、もう溺れ溺れて気付いたら無人島みたいな、そこにK-BOBMまでマイクを握ってしまうなんてもう殺しにかかってきてる。
なにはともあれ、この超絶テクとも言わんともしがたい3人のグルーブ、時たまでる気の利いたパンチライン。音楽の波に溺れたいのであればお薦めのアルバムである。
ってか上記の動画が5000回少々しか再生されてない日本、どうかしてるぜ、ほんと。
デトックス効果のあるアルバムを聞いたことはあるか〜EVISBEATS ひとつになるとき〜
おだやかな曲をやけに聞きたくなる。
なんだろうか、これは大人になったってことなのかな、あんなに聞く気にならなかったOasisの3rdが何故か無性に聞きたくなる、あんなに1stと2ndだけでいいやって思ってたのに…
なぜなんだろう、あの時のギャラガー兄弟もこんな感じだったのかな、いや元々彼らは好きだっただろうそういう曲を。
最近、電車内とか会社に向かう途中に人混みにイライラしてしまう時がある、転職する前の職場、そう秋葉原ではそんなことなかったのにな。首都東京の人混みはやはり味が違うのだろうか...そんな時ふとこのアルバムの曲がイヤホンから流れてくるとなんとも特別な気持ちになる、どの人にも急いでいる理由があって、イライラしている理由があってそこをどうにかこうにか折り合いつけて生きてる、今日はおれが我慢する番でもいいのかなと...
Evisbeats「ひとつになるとき」これほど心穏やかになるアルバムもないだろう。
Evisbeatsという人を知らない人のためにここで紹介を。
元々はAKIRAという名前で近年のヒップホップ界に明るい人ならば知らない人はいないであろうクルー、韻踏合組合で活動していた。
その後MC名をAMIDA、トラックを作るときはEvisbeatsとして活動している。
そしてEvisbeatsとして1st「AMIDA」を出した4年後2ndとして「ひとつになるとき」をリリースするのである。
ひとつになるときというタイトルに関してEvisbeatsはインタビューにてこう語っている。
■「ひとつになるとき」というアルバム・タイトルは先ほどおっしゃったような暮らしの中から出てきたものと想像しますが、そこにある思いは?
「『ひとつになるとき』というタイトルはふと思いついたんですが、エゴから解放されて、本来の自分になる、宇宙とひとつになるといった統合の意味合いがあります。ヨーガでは、梵我一如といったり、密教では、即身成仏みたいに言ったりするようです。まぁタイトルについては、あまり深く考えてるわけでもないです」
参照:
EVISBEATS|INTERVIEW[インタビュー]|Amebreak[アメブレイク]
MC名、1stのタイトルから分かる通り仏教よりのものが好きみたい。
音を作ってる人のバックボーンに何が描かれていようが、音が良ければ良いのである。
とにかく1曲目からいい雰囲気の曲が続く。
BPM90もないぐらいの曲が続いていく、これが素晴らしい、サンプリングの元ネタとか分かる知識持ってないけど、元ネタ集とか出して欲しいぐらいにすべてが良い。
とても耳触りの良いトラックが続いていくけども、そのアプローチが実に多様であって、こうやってもいい音だよ、こうやってもだよ、こうやってもだよと何個も選択肢を提示されているような、友達にこれも好きでしょ、それ好きだったらこれもでしょ、みたいに言われてるようなアルバム。
ちょくちょくトラックを作ってる身からするとなんでそんなビート組めるんだろうみたいなのが多すぎて唖然。
そして仏教的なと言いつつも現代社会に生きる我々にも共感できるようなリリックが飛び出してくるわけです。
"大事なプレゼンに朝寝坊、上司は怒って暴れそう、もうでたらめな仮病であとは任せよう"とかね。
全てを包括したようなアルバムといっても過言では無いかもしれない。
その中からいくつかの楽曲をご紹介。
うーん、イントロのビートから最高でしょ。
ずっとループしていたいもの、ずっと聞いていたい、ずっと揺れていたい。
そして誰かといい時間を過ごしたい。
"何も浮かばなかったからって、何もしてないわけでもなくて、何も言うことがないくらいぐらいになんでもない時間が素敵で"
時間に追われている現代人がなくした何かがこの曲には宿ってるよ。
先行で7inchが出ていたらしいと最近耳にして、絶対7inchで聞いたらもっといい時間が流れるだろうなと...手にはいらないかな。
いい時間のあとにこれ。
イントロからして最高すぎる、田我流の声も素晴らしいね、こんな綺麗な音色だったら邪魔になるのに全く邪魔してないあたりが素晴らしい。
インストで聞いても素晴らしいんだ。
でもリリックも素晴らしいんだ、もうなんか全てのパートが良すぎて染みすぎてなんか全然まとまらない、これ聞いて響かない人いないと思うんだよな、御託はいらないからとにかく聞いて欲しい。
アルバムに入っているのはRemix版
これもトラックをずーっと聞いていたい、心が穏やかに誰にも優しくできるような楽曲、まさにデトックス。
ほんとにデトックス、体の中から余分な物が抜けていくような気がする、本当。
素晴らしい楽曲の数々、Evisbeatsというトラックメイカー、リリシストとしての凄さをとことん体験できるアルバム。
上記参照のインタビューでインタビュアーがシンプルな内容だけに、ホントは一筋縄ではいかないようなことを言いたいのかなと思ったんですが、とか聞いてたけども、わたしは音通りに捉えるほうが健全だと思うね。
半身浴しなきゃ、ホットヨガしなきゃとか言ってるOLにはこっちのほうが断然デトックス効果あるよと教えてやりたい、そんなアルバム。
もっと色々な人に聞いて欲しい。
- アーティスト: EVISBEATS
- 出版社/メーカー: AMIDA STUDIO
- 発売日: 2012/07/11
- メディア: CD
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やりたいことやって生きてこーよ、Slackのかかげる世界観〜My space〜
人は何かを枷を課されながら生きている。最初のうちは楽しいことであってもそれが枷になってしまうかもしれない。
仕事、恋人、友人...そんなことが人間の常だとつねに考えている。
全てがめんどくさくなることもあるだろうし、全てが楽しいなと思える時がじゅんぐりじゅんぐりしているのが世の常、諸行無常とはよく言ったもの。
今回はそんなめんどくせーな感情をあろうことか銀のディスクに乗せて、一般流通させてしまった男のお話。
前回、OZROSAURUSの「ROLLIN`045」を紹介した。ヒップホップ素人のレビュー。
今回はSlack「My Space」
このアルバムで私のヒップホップ観に新たなものが追加された。
よく衝撃を受けたとか180°考えが変わったとかいうけど、変わったじゃない、追加されたんだ。
私の10代、ヒップホップといえばギャングスタラップが最盛期だった、自己のボースト、サグ自慢(カタカナで書くとダサいな)、今となってはボーストもサグも決して誇張表現ではないと分かるんだけど、当時は怖かった。ブリンブリンをジャラジャラとつけている人たちのやる音楽がヒップホップだと。
そして時は経って2012年おそばせながらもこのアルバムに出会った、いや出会ってしまった。
これがヒップホップなのかと、こんなに緊張感のないものがヒップホップなのかと。
エミネムの8mileをはやりに乗って見ていた私にとってこれがヒップホップと呼べるのかと。
気怠い歌い方、はっきりしないトラック、そして気楽なリリック…
私が知っているヒップホップの全てを超越していた、新ジャンルとしてしか捉えることが出来なかった、それがSlackのデビュー・アルバム「My space」なのである。
まず、聞いてみて欲しい。
slackにとっては日常が一番で何をするわけでもなく、このまま友達とストリートで遊ぶことが一番なのである。
何も訴えなくてもいい、ただ作りたいからトラックを作る、歌う。それだけなのである。
これなんて真夜中に思わず自転車を漕ぎだしてしまいたくなってしまう。
どうやってこんなトラック作れるんだろうな、とにかくすごい。
今でもよく聞くんだけれど、とにかくリズムがとりづらい、いやビートは根でしっかりと刻まれているんだけど、上モノの鳴りとか色々なものが複雑に乱雑に絡み合っているので複雑に聞こえてしまうんだろうな。
何を言っているか聞き取りづらい歌い方も、味だと感じてしまう。
SlackのCDにはリリックの記載が無い。それはSlack自身のこだわりであり、私もそれが分かってしまうとSlackらしさが無くなってしまうのではないかと思っているので、今のままにしておいて欲しい。
この後彼は福岡に拠点を移してしまうがそれはまた別の話。
とにかく、私のヒップホップ、音楽観に大きな衝撃を与えた1枚であることには変わりない。
- アーティスト: S.L.A.C.K.
- 出版社/メーカー: DOGEAR RECORDS
- 発売日: 2009/02/18
- メディア: CD
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日本におけるリアルヒップホップ〜BAD HOP BAD HOP DAY 1
ジャパニーズヒップホップはリアルを歌っているのか…
これは、日本のヒップホップを語る上で避けては通れない問題である。
MSCのリーダーであるMC漢は、実際に出来ないことは歌わないそれがリアルなラップだと以前語っていた。
また、SLACKやPUNPEEといった板橋出身のラッパーたちは、自分たちの日常を歌うことによって、新たにリアルさを見出してきた。
そんな中、日本における本当の意味でのリアルなラップを歌っているクルーがいる。
それが川崎出身のBAD HOPだ。
神奈川県川崎市、東京と横浜2つの有名な都市に挟まれている南北に細長い地形。
近年は武蔵小杉の発展が目新しいこの市だが、東京湾に面する川崎駅の南側には工業地帯が並んでおり、工場労働者はたまた、過去に海外から工業地帯に働きにきていた外国人たちが住んでいる。
工業地帯で生まれ育った、T-PABLOW、YZERR率いるクルー、BAD HOP
現在のフリースタイルブームの礎を築いた番組と言われる「高校生RAP選手権」ここで頭角を表したT-PABLOWは現在、「フリースタイルダンジョン」でモンスターという立場で日々フリースタイルを披露している。
なぜ、彼らのヒップホップがリアルといえるのか、それはその生い立ちや育ってきた環境がゲットーだからである。
私自身川崎で生まれ育ってきた、だからこそ南部の荒廃感は身を持って知っているし、できれば近づきたくない街という認識をしている。
あの場所で生まれ育ってきたやつらの言葉に嘘は無いし、実際に私なんかには想像できないほどに修羅場をくぐってきたのだろう。
だからこそ、彼らのリリックには魂がこもっていると考えている。
そして彼らが9月にフリーダウンロードという形で配信したのが「BAD HOP DAY 1」である。
正直言ってトラックに関して目新しい物は特にないと言っても良い、彼らはトラップ系のトラックを主に使っているが、どの曲も似通ってるなっていう印象が強い。
このアルバムの注目点は、トラックではないリリックである。
前述のとおり過酷な環境で育ってきた彼らの生き様がありありと描かれているリリックにこそ注目をすべきなのである。
だからこそ、酒飲んで明日の仕事はバックレるみたいな歌詞が多用されているのも事実なのだが…
T-PABLOWとYZERRの2人が歌う「Life Style」がこのアルバムのメイントラックである。
「お前らのhip hopは習い事、hip hopは生き方だから一緒にするな紛い物」
「hip hopてのは生き方って学んできた道端ぶっ飛ばされて教わってきたんだ 礼儀と口の利き方」
これこそがリアルなヒップホップではないだろうか。
ヒップホップの歴史を紐解けば、NWAに代表されるようにゲットーからの脱出、自身の不憫さを歌う、また自分たちの置かれた立場をなんとかしていきたいということが歌われてきた。
現在の日本において、ゲットーのような地区は数えるほどであり、誤解を恐れずに言うのであればその一つが川崎工業地区なのである。
そのゲットーからの這い上がる決意を歌った音源たちが無料で手に入る、これを聴かない手はないだろう。
一つ苦言を呈するのであれば、下記の「Life Style」のPVがあれだけ川崎レペゼンと言っておきながら横須賀と渋谷で撮られているということである。
なぜ川崎で撮らなかったのか、クルーの意向なのかはたまた、ディレクターの意向なのかは知るよしも無いが、そこだけが残念であった。
BAD HOP /ライフスタイル - T - Pablow 、 YZERR (ゴールドDIGGAことで製品版)
slackの曲は何か大切なものを大切な時間を思い出させてくれる、たまに戻りたくなって仕方なくなる。〜Feelin 29 feat kojoe slack〜
夏も終わり、そろそろ長袖を着なきゃいけないかな、なんて思っていると会社に行くのもかったるくなって、今日は自分一人が休んだところで致命的な何かに繋がる訳でもないし、最近休みなかったし、レコードでもディぐりに渋谷、もしくは下北あたりに行っちゃおうかななんて考えて会社を仮病でサボり、昼前に起きて愛用のピストバイクで246を滑走、三茶方面へ向かっているタイミングでこの曲が流れてきたら最高だろう。でも何が最高なのか分からない、こんなことしてて良いのか会社さぼってて良いのか、大学時代に憧れていたもしくは一緒に何日も過ごしたあの子は何をしているんだろうか、必死にもがいているのではないだろうか、僕は仮病を使い自転車で滑走しているというのに...それがこの曲を聞いた最初の感想だ。
kojoeとsalckがコラボすると聞いていてもたってもいられなかった。待ち合わせの前に何気なくよってみた新宿タワレコ、久々にタワレコにきたら日本のヒップホップコーナーなんて設立されてて、日本のヒップホップが盛り上がってることを改めて実感。
あ、噂に聞いてたslackとkojoeのコラボ作品だなんて思って何気なく7inch同梱版を手にとって見る、やっぱりアナログで聞いてこそだよななんて思って財布をのぞくと全く足りない、まただなーなんて思ってその場をあとにする、それでも忘れられなくて給料日仕事終わりの足で買いに行く、赤ちょうちんで1杯やってほろよいで帰る、そしてこのレコードに針を落とす……
こんな劇的な出会い方でなかったにしろ、この曲はほんとにいい曲なんだ。
愛の楽曲なんて言われてるけど、何か大切な過去の思い出を振り返れる楽曲だ。それが暑い夏の日バカみたいに大学近くの喫煙所であちーななんて言いながら将来の夢について語ってることだって良いんだ。大切なあの子のために贈り物を探している時だっていんだ。
楽曲の解説はいくらでもできるだろう、でも僕はこの曲を聞いて何を感じたかそれが大切だと思っている。ちなみにサビでのトラックのループ感とkojoeのフロウは最高。そして7inchで聞くことをおすすめする、音が優しく寄り添ってくれている感じがするから。CDの方はまだ勿体無くて開けられていない...
あの頃を思い出してこじらせている人にはこじらせをさらに増加させるそんな曲。
5lack / Feelin29 feat. Kojoe(short音源)
yuckのマックスブルーム新譜を語る。
デビューアルバムをリリースしたあと、バンドは大きな転換期を迎える。
2013年バンド結成時のメンバーであった、ダニエル・ブルームバーグの脱退。そしてプロデューサー兼ギターリストのエドワード・ヘインズの加入、さらには2ndアルバム「Glow & Behold」をリリースした。
そして2016年2月に3rdアルバム「Stranger Things」をリリースする。
このアルバムは激しく、ロックンロールの型にはまらない音楽が収録されており、yuckが1st,2ndよりもより輝いて見えるそんなアルバムである。
バンドとして絶頂期を迎えているyuckのフロントマン、マックス・ブルームのインタビューを掲載する。
yuckはデビューしてから5年経過したけど、今回のアルバムを出すにあたって結成当時と何か変わったことはあるかな?
マックス:このアルバムを作るにあたってバンドのメンバー全員が自分のキャリアの中で学んできたことすべてをつぎ込んだんだ。
僕たちは自分たちが出したい音をどうやって出すかを自分のキャリアを通じて学んでいる、そのことが絶対に役に立っていると確信しているよ。
それとメンバーとはここ数年はツアーで一緒にいることが多かったから、ライブで自分たちが演奏して楽しい曲を作ろうとも話していたんだ。
少しでもいいからこの「Stranger Things」を作るにあたっての準備段階について話してほしい、どうして「pledge music」からリリースすることになったのかな。
マックス:レコーディングが1年以上続いていたんだ。ちょうど、Hold Me CloserとCannon Ballを作っていたときかな、いろいろなことが起こって、ちょうどうまい具合にはまったんだよね。こんなに長いレコーディングをしたことがなかったから、僕たちは取り終えた後にどうやってリリースしようか考えたんだ。そしたらマネージャーがpledge musicの話をしてきてさ、それはおもしろそうだと僕たちも賛同したんだ。
自主制作でアルバムを出したり、小さなインディレーベルからリリースするのってマックスの過去の経験と比較してどうだった?
マックス:お金がかからないっていうのはいいよね、それに報酬も大手レーベルから出すよりも多い。ただ人それぞれだと思うから答えは違うと思うよ。
このアルバムに対する情熱はどこから来たのかな。
マックス:アルバムにはたくさんの人たちがかかわっている、それを過去2年間個人的には考えてきたんだけど、それを考えているときはあまりいい時間ではなかったな...そういったことを曲にしてきたつもりだよ。
バンドのメンバーが変わることを受け入れるのはとても難しいことだと思うんだけど、yuckの場合、フロントマンが抜けても立ち直ったよね。このことからどんなことを考えた?
多分なんだけど、なにをすべきでなにをすべきでないかを他の人たちがどう思うかも加味して考えるべきなんだと思う......言うのは簡単だけどやるのはとても難しいけどね。
簡単なことではなかったよ。でも友達が励ましてくれたりしたからそういったことも重要だったね。
話が変わるけど少ないチームでSXSWに出るのは以前と比較してどうだい?
今、バンドとしては日々によくなってると思ってる。だからどこでだろうとサウンドチェックなしだろうとプレイすることはできるよ。SXSWではみんなの期待している以上のプレイをしたいね。
アルバムをリリースしてのSXSWでの演奏はとても重要なことだと思うけどそれに関してはどう?
とてもワクワクしているし、オーディエンスのみんなも同じ気持ちだと思うよ。
今回、はじめてSXSWに参加するインディーのバンドもいるけど、彼らにアドバイスはある?
一生懸命演奏して、一生懸命仕事しよう。
SXSW以降の予定はどうなってるの?
アメリカで長いツアーを行うよ、ラスベガスとか行ったことない都市に行くことになってるよ。
yuckはボーカルがいなくなるという非常に珍しい経験をしたバンドでした。
その年にすぐにアルバムを出し復活をアピール、すばらしい。
3rdはもちろんとてもいい出来です。
過去作よりももっとシューゲイザー感が増しています。ソニックユース飛び越えてマイブラッディバレンタインぐらい。それは言い過ぎかもしれませんが、とても良い出来です。
honne【WARM ON A COLD NIGHT】
ロンドンを拠点にして活躍するエレクトロデュオhonneのデビュー・アルバムがリリースされた。タイトルは【WARM ON A COLD NIGHT】
このタイトルはこのアルバムにとってもあっている。その理由は2つある。
ひとつめは、「warm on a cold night」は彼らの最初のヒット曲であり、このアルバムのリード曲でもある。その曲名をタイトルにするとはこのアルバムに対する期待がとても高まる。ふたつめの理由はこのタイトルがhonneの奏でる音楽の要素を言い表しているからである。このアルバムはとても暖かく、またできることならば夜にベッドで、またできることならばこのアルバムから暖かさをもらうのではなく、他の人(自分の好きなひと)と聞いて欲しいアルバムである。
それではhonneの音楽の中に入ろう、準備はいいかな。honneの音楽に複雑なことはなくとてもシンプルだ。なめらかなシンセサイザーの音とアンディー・クラッターバックのソウルフルな歌声が混ざり合っている。彼らはこのアルバムの最初ではとても面白くキャッチーな方法で楽曲を作っていたが、アルバムの途中からなんだか陳腐な楽曲が増えているような気がした、そこで私は彼らのどこが限界でそれをどうやって超えなければいけないかを今回明かそうと思う。
まず最初にタイトル曲である「warm ona cold night」からこのアルバムはスタートする。
この楽曲からスタートすることはとても素晴らしいなぜならば、このアルバムの中でもっとも力強いトラックであり、なおかつ、このアルバムに対するリスナーの期待を高められる楽曲だからだ。
残りの楽曲から考えてこの曲は一番力強くもなければ一番気楽な音楽でもない、だからこそ、前菜としてリスナーはこの曲を聞くことができるのだ。
2曲目の「til the evening」これも1曲目と同じような構成となっている。密度の薄いコーラスからミュージカルのクレッセンドのように強くなっていくシンセサイザーが象徴的。
みなさんはキャッキーな1曲目をもっと聞きたくなるだろうが、私はこの「til the evening」はもっとソウルな楽曲から影響を受けており、コーラスがずっと鳴っているあたりが1曲目との違いであると考えている。
これまでの2曲はこのアルバム最大の名曲である、3曲目の準備でしかなかったのだ。
その名も「someone that loves you」である。
この曲の特徴は始まってすぐに、アルバム内でもっとも力強い音を出すところである、そして浮遊性があり素早いトラックは他のアーティストのエナジーみなぎる楽曲よりも素晴らしい。
そしてさらにアルバム唯一のフューチャリングでの楽曲であることも注目すべき点である。
イジービズ、彼女の特異な声が絶妙なさじ加減でこの楽曲を唯一無二のものにしてくれている。
そして、彼女の歌声の影響を最も受けているのがアンディだ。
彼はこの曲の最中、イジービズの歌声をかなり真似て歌っている、その結果この2人のヴォーカリストの歌声は素晴らしいものになっている。
アルバムを先に聞き進めよう、「All in the value」ではコーラスが楽しめ、さらに長くゆっくりなシンセサイザーの音ではなく元気で快活な音が聞ける。
次の「treat your right」ではポジティブな歌詞とともに、ファジーであたたかみのある曲調はまるで大きなくまに抱かれているような安心感を感じさせてくれる。
とても残念なことにこのあとの楽曲は聴き進むにつれて、ひどくなっていく。
「out of my control」は独創性にかけたスロージャムでwarm on a cold nightの二番煎じにもなっていない、さらに彼の犬の骨をあげたなどという歌詞も聞いた瞬間に身がすくむ思いがした。
多かれ少なかれ、アルバムの最初の方に入っている楽曲の焼きましのような楽曲しか今後は出てこない。
「it ain't wrong loving you」はゴスペル・ソウルに少し影響を受け、曲調をそれに合わせているがまったく感動することがなかった。
そして私はストレスを感じずにはいられなかった、なぜなら彼らはアルバムの最初の数曲で、大きな感動を与えてくれたのだ、にも関わらずなぜアルバムを通してその水準の楽曲を聞くことができないのだろうか。
しかし、終盤の2曲で私の評価は一変する。
「take you high」ファンキーな楽曲にさらにちょうどいいゴスペルのトーンが響きあうとても良い楽曲だ。
さらに「baby you're bad」最初に聞いた時、この曲はディスコビートだ!と私は感じた、私はディスコ調の音楽をこよなく愛しているので、勝手なバイアスがかかっていることは認めよう、しかしそれにしても終盤の2曲でこのアルバムの評価は見事にもちなおしたのだった。
このアルバムは非常に洗礼されたデビューアルバムであり、ところどころ魅力的なトラックもあった。
彼れは力はとてもあると思うので大きな羽をさらに広げてまだ踏み込んでいない領域までテリトリーを広げて欲しいと思う。