N.O.R.Kラストライブに寄せて
New Actionという団体がいることをご存じだろうか。
星野喜一郎、遠藤孝行らが率いるイベントのタイトルである。
そんなNew Actionがこの度コンピレーションアルバムをリリースした。
LUCKY TAPESであったり、YOUR ROMANCEであったりと今の下北沢インディーシーンを沸かせている若手がふんだんに参加している。
そのリリースパーティが全国で行われ、9/23(水)に東京でファイナルが行われた。
その中で、N.O.R.Kというデュオのラストライブが行われた。
N.O.R.Kとはヴォーカル、小袋成彬とトラックメイカーの國本怜氏からなる二人組である。
私が彼らを知ったのは、「下北沢サウンドクルージング」にて急遽発表された80KIDZのDJセットを新代田FEVERに見に行った時である。
フロアが盛り上がってきた時、突如、かかるノーヴォーカルのJamiroquai「Virtunal Insanity」そして出てくるグラサン長髪を後ろで束ねた緑Tシャツの人物、そう「Virtual Insanity」を華麗にまるでアテレコの様に歌い上げた人物こそ、小袋成彬だったのだ。
このイベントにおいては様々な音楽と出会ったのだがこの出会いが一番衝撃的だった。
朝まで下北沢で過ごし、地元の駅から家までの間でとりあえず調べた。彼は誰だったのかと、80KIDZのAliが「おぶくろクンです、彼は面白い音楽をやってるから~」とMCで言っていたことを手掛かりに何とかCDジャーナルの記事に辿り着く。
そしてN.O.R.Kを知ることとなる。
音源をすぐさま購入し聞く。
これはインディー界にとって衝撃的な物なのではないかと驚きを受ける。
なぜ、日本の音楽メディアは彼らを放っておくのだろうか、とにかくあの日を忘れることが出来ない、Franz Ferdinandを聞いた時の衝撃と似ている。
とにかく聞いて欲しい。
N.O.R.K. - YELL OUT (#05) - YouTube
曲冒頭のピアノとそしてこの素晴らしい声、こんなデュオが日本にいるなんて、いやいたなんて。
彼らの音源を聞きかじること早数か月、前述のNew Actionに N.O.R.Kが出るということを知る。
何やらラストライブという文字が躍っていた。
音源通りの音でなくて良い、彼らならライブならではのアレンジも相当見ごたえのある物に仕上げてくれるであろう、そんな期待を込めて足を運んだ。
そして幕開け、登場から面食らう。
この日初めてN.O.R.Kのライブを見る。
デュオそしてあの音源、二人での登場と思っていた、ピアノだけ生音で他は打ち込みだろうと考えていた、だが違った。
新宿MARZのステージの上にストリングスが3人、ドラム、ギター、ピアノであるそして二つの白いライトに照らされる小袋氏。
新宿ではない、まるでニューヨークでのステージを見ているような威厳。
そして独唱で始まるステージ。ワザと無音の時間を作り静寂を楽しむかのようなステージング。
普段はざわざわとしているのがスタンダードなライブハウスにおいて、あの状況はもはや異例。
Frank Ocean「Thinkin bout You」のカバー、R&Bに疎い私にとって他のカバー曲は分からなかったがそれでも、オリジナルに聞こえるぐらい歌い上げる姿、音源化されている曲に関しては全て演じていた。
「The Fall」が始まった時には思わず声を上げてしまった、しかし、それ以外の時間、歓声すら上げることすら忘れてしまうあの歌声、あの演奏。
開演当初、小袋氏の声に衝撃を受けていたが、演奏をしている國本氏の手に徐々に惹きつけられた。
彼は指揮者だったのだ、演奏スタートのカウントこそ小袋氏の声によるものもあったが、そこからは全て國本氏の手の内、特にドラムとの絡みが最高に痺れた。高度に緻密に練られたステージだった。
ベクトルは違うが、今年SUMMER SONICで遭遇したAriana Grandeのステージを見た時と同様の衝撃が走った。こんなステージを私は見たことが無かった。
MCでは今後のお互いの活動について語っており、國本氏は1人での作品作成に打ち込むとそれが媒体として出るのか作品として出るのかは分からないと語っていたが、どちらにせよ、必ずチェックしたい、そして小袋氏は一部メディアにて語られている様に自主レーベルを株式会社化、とりあえずメイクマネーをしていきたいと語っていた。
(余談だが彼らのレーベルではTシャツを売り出している、(小袋氏曰く「絶妙に大人を試す値段」)New Action後はSOLD OUTとなっていた。)
今後、N.O.R.Kとして表舞台に出ることが無いとは宣言はしていないが、おそらくないであろう二人、これだけのステージが出来るのにとても勿体ない。
あの時新宿MARZにいた人々は奇跡を目撃したと言っても過言ではない。